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地下流水音の測定方法と測定注意点

技術資料

地下流水音測定装置GAS-03 のピックアップセンサーは、地下を伝わってくる音(振動)を加速度(m/s2)として感知し、加速度の大きさを電圧(mV)に変換しています。測定記録器では変換した電圧信号を増幅した後、低周波と高周波信号をフィルターで消去し、地下流水音を聴き分けやすくしています。また、音の強弱を判断できるように、演算処理で1次処理、2次処理を行って地下流水音の大きさを数値化し、数値で液晶パネルに表示するとともに、レベルメーターで指示しています(図1)。

図1 地下流水音測定装置の演算処理

データ処理の概要

 図2は、地下流水音を処理した後の波形を示したものです。地下流水音は、「ボコボコ」という音が生じる時に図2に示すようなピークが生じます。演算処理では、この「ボコボコ」という音のピーク値を多く集め平均を求め、地下流水音の代表値(D)値を算出しています。演算処理では、代表値(D)値を算出するために、1次処理、2次処理の2段回の処理を行っています。以下、詳細について説明します。

図2 地下流水音を処理した後の波形

①1 次処理(生データのピーク値「PD」収集)

 1次処理では入力データのサンプリングを0.5msec(2KHz)毎に行い、設定した間隔(サンプル数)ごとに最大値を収集します。ここで得られた最大値を「ピーク値(PD)」と呼び、この処理を60回行い60個の「ピーク値:PD1」~「ピーク値:PD60」を算出します。また、サンプル数は「セッテイ サンプリング」の設定画面にて100~500の範囲の値、50単位で設定できます。

 図3はサンプル数を200とした時、入力データよりピーク値(PD)を収集した例です(グラフは本来1計測あたり200個のサンプル点が存在しますが、見やすいように点の数は省略しています)。

図3 1次処理イメージ

また、サンプル数を200回に設定した場合、次式のとおり0.1秒間で得られた200個のデータから最大値を求めることとなります。

測定目的の音源(地下に流れる水の場合は水の曝気音等)を捉える際、サンプル数を変更することで目的の音をより多く捉えるよう設定できます(地下に流れる水の場合は地質の種類により含まれる曝気音の量が異なります)。

サンプル数の期設定は200回としていますが、目的の音源が少ない場合はサンプル数を多く(測定時間を長く)、多い場合はサンプル数を小なく(測定時間を短く)、設定することで目的の音源を捉えやすくなります。ただし、測定時間を長くすると測定中に動いたりして、ノイズが入りやすくなります。また、サンプル数の設定値によりピーク値(PD)を算出するための時間が変化するので、異なる設定条件の結果を比較する際は注意が必要です。

②2 次処理(代表値「D」の算出)

2 次処理では1次処理で得られた60 個の「ピーク値(PD)」の中からもっとも大きい値を求めるか、大きい方から複数個の「ピーク値(PD)」を平均します。(個数は設定で変更できます)
ここで得られた最も大きい値、または、平均値を「代表値(D)」と呼びます(図4)。

図4 2次処理イメージ

代表値(D)算出方法は以下のA、B の2つのパターンより選択できます。

A.60個のピーク値(PD)から最も大きい値を検出し、代表値(D)とする。
代表値(D) = ピーク値(PD)max

B.60個のピーク値(PD)の中から、値が大きい順に設定した数だけピーク値(PD)を抽出し、それらの平均値を求め、代表値(D)とする。

平均データ数AVE(X)にて大きい値から何個のピーク値(PD)を平均するかを設定する。

代表値(D)=(ピーク値1(PD1)+ピーク値2(PD2)+…+ピーク値(X)(PD(X)))/N(X)

「A」の算出方法を使用するか、「B」の算出方法を使用するかは設定により変更できます。

「B」の方法を選択した際は抽出する最大値の個数を平均データ数設定で2~60個の範囲で設定することができます(図5 は60個のピーク値(PD)を大きい順に並べ替えたグラフ)。

また、平均データ数が多くなればなるほど代表値(D)は小さくなります。

図5 ピーク値(PD)を大きい順に並べ替えたグラフ

ピーク値(PD)および代表値(D)の加速度単位への換算方法

ピーク値(PD)と代表値(D)は指標値です。そのままの値を用いても地下流水音の大小を比較することができますが、この指標値から加速度(m/s2)を求めることもできます。
図6は、AMP を1~10に変更した場合のピーク値(PD)、代表値(D)と加速度の関係を示したものです。
0~999 の範囲で変化するピーク値(PD)、代表値(D)に対し、加速度は3 次関数状に増加します。

図6 ピーク値(PD)、代表値(D)と加速度の関係

図6 に示した指標値である「ピーク値(PD)」と「代表値(D)」と加速度(m/s2)の関係は、①式で表すことができます。

G=(1.37561×10-17×X5 - 3.3382×10-14×X4 + 3.26003×10-11×X3-1.44833×10-8×X2 + 4.81626×10-6×X)/ Ki ①

G:加速度(m/s2
X:指標値(ピーク値(PD) または、代表値(D))
Ki:AMP(i)の設定によって定まる係数(表1 参照)、i:AMP の設定値(1~10)

表1 AMP(i)設定と係数Ki の関係
AMP(i) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
増幅率 0.0917 0.1724 0.2579 0.3226 0.400 0.4839 0.5885 0.6897 0.8257 1.0
係数Ki 1.00 1.88 2.70 3.52 4.36 5.27 6.31 7.52 9.00 10.90

・加速度への換算例

<例>

ピーク値(PD)から加速度への換算例を示します。
測定条件がAMP=5、測定した値がピーク値(PD)=156 の場合
X=156、Ki=4.36 であるので加速度G(156)は

加速度G(156)
=(1.37561×10-17×1565-3.3382×10-14×1564+3.26003×10-11×1563
 -1.44833×10-8×1562+4.81626×10-6×156)/4.36
=(1.27092×10-6-1.97739×10-5+1.23764×10-4
 -3.52466×10-4+7.51337×10-4)/4.36
= 0.000504/4.36
= 0.000116

AMP=5、測定したピーク値(PD)が156の場合0.000116(m/s2)となります。

ピーク値(PD)および代表値(D)を求めるために要する時間

 代表値(D)は、任意の時間のピーク値(PD)の上位n個の平均を求めたもので、平均データ数設定AVE(n)で決定します。任意の時間は、表2のようにサンプル数の設定値で決まります。

今、サンプル数=200の場合のPDを求める時間TPD及び、Dを求める時間TDを考えます。サンプリング周期0.5msec(2000Hz)で測定したデータを200個ためて、その最大値を求めたものがPDとなるので、

TPD = 0.5msec(2000Hz)×200個 = 0.1 (sec)
となり、PD は0.1秒間の最大値となります。
この0.1秒毎に求めたPDを60個ためて、その中の上位n個の平均がD 値であるので、

TD = 0.1sec × 60 個 = 6 (sec)

となり、D は6 秒間で求められることになります。
代表値(D)を求める時間TD は表2 に示したように、サンプル数(50~500)で変化します。
以上のように、代表値(D)は表1 に示す任意の時間において、60 個のピーク値(PD)の上位n個を平均したものになります。

表2 ピーク値(PD)と代表値(D)を求めるために要する時間
サンプル数 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
TPD 0.025 0.05 0.075 0.1 0.125 0.15 0.175 0.2 0.225 0.25
TD 1.5 3 4.5 6 7.5 9 10.5 12 13.5 15

*サンプル数:ピーク値(PD)を求めるのに要するデータの個数、設定値
*TPD :ピーク値(PD)を求めるのに要する時間(sec)
*TD :代表値(D)を求めるのに要する時間(sec)

測定条件に関する注意点

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